本州最北東端にある青森県の尻屋埼灯台。
その灯台周辺に半野生の状態で放牧されている寒立馬(かんだちめ)を訪れた時の様子を紹介します。
青森県の下北半島に暮らす寒立馬(かんだちめ)とは?
太平洋・陸奥湾・津軽海峡の3つの海に囲まれた本州最北端の下北半島。
その下北半島の最北東端に位置する尻屋埼灯台に半野生の状態で放牧されている馬が寒立馬(かんだちめ)


「寒立馬」という面白い名前の馬ですが、元々は「野放馬」と呼ばれていた寒立馬。
冬にカモシカが山地の高いところで長時間雪中に立ちつくす様子を表すマタギ言葉の「寒立ち」が名前の由来で、寒風吹きすさぶ尻屋埼の雪原に立ち尽くす様子がカモシカの「寒立ち」に似ていることから寒立馬と名付けられました。
昭和45年(1970年)に尻屋小中学校の岩佐勉校長が年頭の書初め会で詠んだ短歌以来、尻屋の野放馬は「寒立馬」と呼ばれることに。
「東雲に勇みいななく寒立馬筑紫が原の嵐ものかは」
岩佐勉
2002年(平成14年)には寒立馬とその生息地が県天然記念物にも指定され寒立馬やその生息地の保護が進められています。


元々動物が好きで寒立馬の存在は知っており、日本一周の車中泊旅で青森を訪れた時に寒立馬が暮らす青森県下北郡東通村へ行くことに。
寒立馬の暮らす青森県下北郡東通村へ
津軽海峡 ウミウコロニー
寒立馬が暮らす青森県下北郡東通村へ。
本州最北東端に至る青森県道6号むつ尻屋崎線の道中は抜けるような青色の津軽海峡を左手に眺めつつ北進。




途中にある岩壁ではウミウがコロニーを作り子育て中の親鳥が子供に餌を運ぶ姿も。










三菱マテリアル 青森工場(2023年操業停止)
さらに北へ進むとセメント工場があり工場脇で面白い看板を発見し停車。




セメント工場(UBE三菱セメント 青森工場)の看板には日本語、英語、中国語に加えロシア語も書かれており北へ来たことを実感。


この三菱マテリアルの青森工場は日本で最も新しいセメント工場で焼成用の熱エネルギー源として使う石炭をロシア本土やサハリン州から海上輸入しているとのこと(2023年操業停止)
その関係から看板にロシア語表記があるのかもしれません。
尻屋崎ビジターハウスで寒立馬と人生初対面
セメント工場を通過してしばらく走ると道路上の青看板に「尻屋埼灯台」の文字が。


青看板のすぐ先には尻屋崎ビジターハウスの建物があり車を駐車。


車を降り周囲を見渡すと冊の奥に大きな馬が1頭いるのを発見。


望遠レンズをのぞきこむと筋骨隆々の体格にガッシリとした四肢の寒立馬が映し出され人生初の寒立馬と御対面。


驚くほど簡単に寒立馬と出会えたことにやや拍子抜けするも、冊のない場所で自由に移動する寒立馬を見たい気持ちが大きくなり撮影意欲が膨らみます。
まずは気になる建物の尻屋崎ビジターハウスへ。


建物内は土足厳禁。


建物内の床やテーブルが驚くほど綺麗に清掃されています。


壁一面には寒立馬に関するポスターや写真が所狭しと飾られています。








建物の奥にトイレがあることを確認しトイレの近い私は一安心。


尻屋崎放牧場で寒立馬探し
尻屋崎ビジターハウスを出て道路上にあった気になるゲートを確認。




このゲートは尻屋崎放牧場の入口ゲートになっておりゲートの開閉時間は8時〜16時。


万が一ゲート内に閉じ込められた時の対応も看板に書かれています(とても親切)


閉まる時間が少し早いのが残念ですが5月からはゲートの開く時間が7時〜17時と季節により変わるようです(私が訪れたのは4月末)


タイミングよくゲートにやって来た車を見ていると何もせず車で通過すれば自動的にゲートが開くようです。


二輪車はゲートが反応しないのでゲート脇にある押ボタンを押しゲート内へ。


道路脇にある看板の地図を見て自分が本州の最北東端まで来たことを実感。




時間が惜しいので明るいうちにロケハンがてら車でゲート内の寒立馬探しに出発。


尻屋崎ビジターハウス横の柵内であっさり出会えた寒立馬。
尻屋崎放牧場のゲート内でも簡単に出会えると高を括り運転するも全く見あたらない寒立馬の姿。
尻屋崎放牧場の中は綺麗に整備された道路が一本通っており、寒立馬には出会えないものの道路から見える景色は絶景。








結局寒立馬には一頭も出会えず尻屋崎ビジターハウスの反対側にある東側ゲートに到着。


冬に訪れたい寒立馬越冬放牧地アタカ
東側ゲートを出ると左手にある寒立馬越冬放牧地アタカ。




寒立馬が尻屋崎放牧場に放牧されているのは4月〜11月。
冬季の12月は移動期間で1月〜3月は越冬放牧地のアタカに寒立馬は放牧されています。


寒立馬越冬放牧地アタカ
寒立馬の由来
1189年(文治5年)甲斐国南部荘三郎光行公が、奥州藤原氏征伐の軍功により、源頼朝公
から南部藩を御加賜統治されて以来南部藩は我が国きっての駿馬の産地として隆盛を誇りました。
此処尻屋崎も南部藩領にあって、民営の放牧場として馬産振興が図られました。
又、南部港は1454-5年(享徳3-4年)ロシヤ、韃胆、蒙古から馬を輸入、さらには明治政府
の馬産振興による外国種馬での改良等幾多の変遷を経て今日に至っております。寒立馬は競争馬と
比べれば胴長短足でスタイルはよくありませんが、蒙古馬の血を引継いでいるせいか粗食で、
寒さに強く、徒順な性格だといわれています。
祖先も「四季置附」と称し、1年中放し飼いにされてきました。
「寒立馬」の名前の由来は、昭和45年尻屋小学校長岩佐勉先生が
「東雲に 勇み嘶く寒立馬 筑紫ケ原の 嵐ものかは」正月二日「書き初め」に
おいて詠みました。以来、全国の皆さんに「寒立馬」と呼ばれ可愛がられております。寒立馬観察に当たっての注意!
1.馬の背後から近づかない。2.えさは与えないで下さい。
寒立馬は温和で人に慣れておりますが、以上のことは絶対守って観察して下さい。
又.寒立馬のいるところは牧場です。ゴミはすべて持ち帰りましょう。東通村
尻屋牧野組合



今度は冬に訪れ雪原に佇む寒立馬を撮影してみたい


尻屋埼灯台
東ゲートを通り再び尻屋崎放牧場の中へ。


来る途中に見えた綺麗な白い灯台の元へ。


近くにある駐車場に車を停め徒歩で灯台へ。


青空に映える真っ白な灯台は尻屋埼灯台


1876年(明治9年)に点灯を開始した尻屋埼灯台はレンガ造りの灯台では日本一の高さ(30m)を誇る灯台。


2022年には国の重要文化財にも指定されている歴史的な灯台ですが、私が訪れた時は残念ながら中に入れず。


近くで見ると本当に綺麗な形の灯台でしばらく灯台の周りを散策。








灯台付近で何気なく足元を見るとかなり古いものですが馬の糞を発見。


少し離れた場所には糞を栄養に成長したキノコ付きの馬糞も。


寒立馬の姿は見えませんが馬糞があるということは間違いなく寒立馬がここにいた証。
尻屋埼灯台から見える津軽海峡の眺めを楽しんでから再び寒立馬探しに出発。


寒立馬を求めて森の中へ
尻屋崎放牧場内の道路を走っていると目に入る津軽海峡や太平洋の綺麗な海。


海の反対側にはそれほど高さはないものの森があります。


訪れたのは4月末ですがじっとしていると汗をかく蒸し暑い日中。
野生動物は日の出前後の薄暗い朝の時間帯と夕方頃に出会えることが多く、日中は人目のつかない森などで休んでいることが多い印象。
寒立馬も暑さを避け森の中にいると思い森の周辺を調べてみると、森側の道路上や芝の上にはたくさんの馬糞が。




森の中に入り寒立馬散策を開始。




木々の影になり涼しい森の中。


寒立馬の姿を探しながら森の中を歩くも残念ながら出会えず。
森の中で見つけたのは馬糞を探して地面を見ている時に発見したモグラの死骸だけ。


尻屋崎放牧場のゲート内では私と同じように寒立馬を探しているのか、同じ車と何度かすれ違います。


尻屋崎放牧場のゲートが閉まる時間まで粘るも寒立馬は見つからず。
ゲートが閉まる前に尻屋崎ビジターハウスへ戻るとゲート付近に駐車している1台の軽トラックを発見。


軽トラの青森ナンバーを確認し乗っている方も地元の方のようなので話を聞かせてもらうと、このゲートを管理をしている方でゲートを閉める時間まで待っているとのこと。


こんなありがたい人に出会えたことに感謝し、寒立馬や尻屋崎放牧場についての話を聞かせてもらうことに。
- 寒立馬は集団で移動し風や天気で居場所を変えている
- 尻屋崎放牧場のゲートは昔なかったがウニなどの密漁対策で設置された
- ゲートが閉まった後も徒歩でなら中に入れる
話を聞かせてもらった後に尻屋崎放牧場の中でよく目にした密猟禁止の看板を思い出しゲートの設置目的に納得。




ゲートが閉まった後は寒立馬探しも諦めていましたが、ゲートがウニなどの密漁対策で設置されたもので写真を撮る人はゲートが閉まった後も歩いて行っていることを聞き一安心。
事前に車で尻矢埼灯台までの距離を車のoddメーターで測り片道2kmもないことを確認していたので、夕日の沈む尻矢埼灯台と寒立馬を撮影するための準備をしてからしばらく休憩。
夕陽に照らされた尻屋崎放牧場の寒立馬
カメラの準備をして16時過ぎにゲート内を歩き始めると丘の向こうに寒立馬の集団がいるのを発見!


あれだけ探していなかった寒立馬ですが、入口ゲート付近の森にいたようで夕日を背景に夢中で寒立馬を撮影。






こちらを気にする様子もなくゆったりと道路を横断する寒立馬。




寒立馬を撮影している時はこちらから無理に近づくことは避けましたが、人に慣れているためか草を食べる音が聞こる距離まで近づいてきてくれます。






尻屋埼灯台と寒立馬を一緒に撮影したい気持ちを諦め切れず、夕陽に照らされた寒立馬に後ろ髪を引かれつつ尻屋埼灯台へ。
大きな夕日を眺めながら約2kmの道のりを歩き尻屋埼灯台へ。




尻屋埼灯台へ向かう途中の道で夕陽に照らされた草むらに動くものを発見。


最初は尻尾の短いタヌキかと思いましたが独特の目などを見て生まれて初めて見たアナグマだと判明。
海から強い風が吹いており風下にいる私には全く気づいていない様子。


ふと顔を上げた時に私に気づき可愛らしい歩き方で逃げていきました。




道路を渡り終えこちら振り返る最高のシャッターチャンスに何故かカメラのシャッターが切れない状態に。


先ほど気分よく寒立馬を2,000枚以上撮影したらしく、どうやらSDカードの容量がいっぱいになったようです。
予備のSDカードを車に置いてくる初歩的なミスを犯し、標準レンズのカメラに入っているSDカードを急いで望遠レンズのカメラに入れ替るも顔を上げた時には既にアナグマは森の中へ…



その場の状況で撮影できない時は諦めがつきますが、準備不足で絶好の撮影チャンスを逃すのは悔しいというか情けない気持ちになります…
森の中へ逃げたアナグマを横目に進み続け尻屋埼灯台に到着。


夕陽に照らされた尻屋埼灯台は本当に綺麗ですが、周囲を散策するも残念ながら寒立馬は見当たらず。


ゲートを閉められた尻屋崎放牧場の中には既に車が1台もいないため、目の前の津軽海峡に沈む夕陽を眺めているのは自分一人だけ。


この絶景を独り占めしているなんとも言えない贅沢な気分を味わいつつ、入口ゲート付近にいた寒立馬がまだいることを願い歩いて来た2kmの道のりを早足で戻ります。


途中の道路には堆積した砂に残された寒立馬の足跡も。


26.5cmの私の靴と比べると蹄の大きさが分かります。


ゲートまで戻ると日もだいぶ傾いてきましたが、最初に見た寒立馬がまだゲート付近で食事をしている姿を見て一安心。




日が暮れるまで夕陽に照らされた寒立馬を夢中で撮影。








うっすら昇り始めた月と寒立馬。




こちらの思い通りに撮影できない野生動物ですが、埼玉からやって来たオジサンへのサービスなのかホンドギツネまで姿を現してくれます。




寒立馬とホンドギツネを忙しく撮影する最高に幸せな時間を堪能。










日も暮れ始め撮影が難しくなったところで入口ゲート付近に停めてある車へ。


明日の朝も寒立馬を撮影させてもらうため今夜は駐車場の隅に車を移動し車中泊させてもらうことに。
近くに銭湯や食事をする場所もないためウェットティッシュで体を拭き1日動き回り汗だくになった体もサッパリ。
持ってきた電気ケトルでお湯を沸かし途中の道の駅で買ったラーメンが今夜の夕食。


どうしても甘いものが食べたくなり秋田県でお土産用に買ったチョコ餅を我慢できずに開封…




食事を終えGoProの動画や写真のデータをバックアップしていると1つの外付けHDDが突然作動しない状態に。
今までのデータは残っていますが上書きや変更ができない状態になったのでもう1つの外付けHDDにデータをコピーしながら初期化。
初期化した後は使えるようになりましたが全てのデータが一瞬で消えることを考えると青ざめます。
2つの外付けHDDとAmazonフォトでバックアップをとっているとは言え何が起きるかわからないデジタルデータ。
色々とデータをいじっているうちに夜中の4時近くになり急いで就寝。


早朝の寒立馬を撮影
昨夜は撮影データのバックアップ問題や車を揺らすほどの強風が一晩中吹いており1時間ほど横になると翌朝に。
車内の目隠しカーテンを開け外に出ると昨夜の強風は止み昨日に引き続き気持ちの良い快晴。
すぐ近くの草原で寒立馬が歩いている夢のような光景を目にすると寝不足の頭も一瞬で冴え最高の気分に。


朝日の中で佇む寒立馬をのんびり見学させてもらい数ショット撮影してから寒立馬の撮影旅は終了。






寒立馬と楽しい時間を過ごさせてもらった尻屋埼放牧場を後に。


寒立馬との出会いから日本在来馬を巡る旅へ
今回の寒立馬との素晴らしい出会いをきっかけに興味を持ち始めた日本の馬。
日本に昔から暮らす「日本在来馬」というものが存在し、現在日本には8種の日本在来馬がいることが判明。


- 北海道:北海道和種馬
- 長野:木曽馬
- 愛媛:野間馬
- 長崎:対州馬
- 宮崎:御崎馬
- 鹿児島:トカラ馬
- 沖縄:ミヤコ馬
- 沖縄:与那国馬
いつ回り終えるのか分かりませんが、この寒立馬との出会いをきっかけに日本各地にいる日本在来馬を巡る旅へ出発することに。
【ちょっと余談】寒立馬と人間の事故
私が訪れた2021年には放牧地内を自由に移動していた寒立馬。
以前から観光客が馬に蹴られたり鼻で突かれる寒立馬と人間の事故が毎年1件ほど起きていたようですが、私が訪れた数ヶ月後の2021年7月には観光客が顔の骨を折る大事故が発生。
その後は放牧地全体での放牧は取り止め柵を設置するなど放牧エリアを制限したようです。
放牧地内にある看板にも書かれていますが寒立馬は放牧中の馬で人間に慣れてはいますがペットを連れ出すのはもちろん、大声を出して驚かしたりこちらからの不用意な接触は避けるべきこと。




寒立馬観察に当たっての注意!
- 馬の背後から近づかない。
- 誕生間もない親子連れに近づかない。特に母馬に注意。
- 牡馬(特に馬体が大きい)には、絶対近づかない。
- エサを与えない(食べ慣れないもので体調を崩す恐れがあります)。
- ペット等の動物を敷地内に連れ出さない。警戒され、思わぬ事故につながります。
- 放牧地内を自由移動するため、林地などへ移動している場合は見ることができない場合があります。
寒立馬は温和で人に慣れていますが、以上のことは必ず守って観察して下さい。
敷地内はほぼ全て、地元団体が所有する放牧地(私有地)です。ゴミは全てもちかえりましょう。
また、不要な立ち入りや山野草・岩石等の採取は行わないでください。尻屋牧野組合
私が訪れた当時も車(他県ナンバー)で来ていた4〜5人の観光客が寒立馬の周りで大声を出しながら寒立馬と記念撮影。
馬の後ろにも立っており蹴り上げられないか見ているこちらがヒヤヒヤしましたが、本人たちは全く気にしていない様子。
その観光客はゲートの閉まる16時以降も放牧地内にいたため、鎖のされたゲートから車を出すため看板に書かれた連絡先へ電話。




連絡を受けて呼び出されたのか先程話を聞かせてくれた男性(尻屋牧野組合・寺道和廣さん)が再びゲート付近に戻ってこられゲートを開けていました(かなり大変…お疲れ様です。)
旅先で大きな動物に出会いテンションが上がる気持ちもよく分かりますし、私も100%全てのルールを守れているとは断言できないので偉そうなことは言えませんが相手は動物。
特に寒立馬ほど大きな動物になれば人間との接触で死亡事故がいつ起きてもおかしくはありません。
動物側は自分で対策することができないため、見学する人間側がルールを守らなければ今は楽しめている柵越しの見学もいつかは出来なくなる可能性も。



あの魅力的な寒立馬を見れなくなるのはとても残念なことです…
個体差はあるはずですが遠くから見ていても伝わってくる寒立馬の穏やかな性格や温和な雰囲気。


動物の専門家でもないのでいい加減なことは言えませんが、最低限の距離を保つことや進路を譲る、子育て中の親には近づかず刺激しないなど、こちらが寒立馬の生活エリアに入らせてもらっている気持ちを持って接すれば、そうそう大きな問題は起こらないない気もします。





寒立馬も注意書きを読んで勉強中。
私も含め人間側もしっかり最低限のルールを頭に入れ寒立馬を見学させてもらいましょう。







