紙の本をスキャナーで読み込みデジタル化する「自炊」
「自分でやるのはめんどくさそう…」
「自炊代行業者に頼むならどこが良い?」
「簡単な自炊方法はあるの?」
初めて自炊する人には様々な不安や疑問があります。
この記事では私が自炊代行業者に頼まず自分で本を自炊することを選んだ理由や1,089冊の本や雑誌を実際に自炊したやり方について紹介します。
これから本・雑誌の自炊を考えている人や自炊代行業者に依頼しようか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみて下さい。
本を自炊することで今まで大量にあった紙の本がデジタル化しスマホやタブレットで家にあった全ての本が場所を選ばず読めるようになります。
その一方、本には作品を書き上げた作者に著作権があり、自炊した本人や家族以外に自炊したものを見せたり無断でネット上にアップロードすることや販売することが禁止されています。
「自炊した本は自分だけが楽しむ」という前提で、この記事をお読み下さい。
- 平成23年度著作権委員会第4部会:
自炊代行業者に書籍の自炊代行に関する著作権問題 - ITmedia NEWS:
「自炊」代行は著作権侵害 最高裁で確定 - 知的財産権法判例研究会 判例評釈169:
自炊代行事件
引用「書籍の自炊代行に関する著作権問題」
- 自炊:自己が所有する書籍をスキャナー等で電子データ化すること。
- 自炊代行:書籍の所有者から依頼を受けて所有者に代わって書籍を裁断・電子データ化すること。スキャン代行とも呼ばれる。
本の自炊代行業者ではなく自分で自炊することを選んだ理由
本の自炊を考えている人の中には自炊代行業者の利用を考えている人もいるかもしれません。
私も最初は自炊代行業者に頼もうと考えていましたが、次の3つの理由から自分で本の自炊をすることにしました。
- 自炊代行会業者選びが大変だった(めんどくさい)
- 本以外も自炊(デジタル化)したい
- 今後も紙の本を購入する
1.自炊代行会業者選びが大変だった(めんどくさい)
これが自分で本を自炊することに決めた1番の理由ですが、ネットで検索すると本当にたくさんの自炊代行業者が出てきます。
- スキャンピー
- そのままSCAN
- 未来BOOK
- BOOK SCAN
- 電シカ君
利用する自炊代行業者によって料金や対応しているサービスが大きく異なり、どの自炊代行業者を選べばいいのか本当に迷ってしまいます。
- 対応書籍の違い(漫画だけ、A4サイズ以下等)
- オプション料金の違い(OCR、カラー、ページ数等)
- 保存ファイル形式
- 納期
- 支払い方法…
私は文庫本やハードブック、雑誌など様々な種類の本を自炊したかったので、書籍ごとに1社1社料金や対応サービスを調べて比較するのが大変でした。
また、調べていくうちに自炊できない作者の書籍もあることが分かり、本の分類や料金比較をすることに大きな手間を感じることから自分で自炊することにしました。
2.本以外も自炊(デジタル化)したい
今回の自炊では本だけでなく今まで書きためた日記や旅行先でもらったパンフレットなど本以外の資料もデジタル化したいと考えていました。
iPad購入後、日記はアプリの「GoodNotes」で書いていますが、それ以前の日記は全てノートに手書きしていました。
また、旅行先でもらったパンフレットも仕事で利用することがあり、デジタル化していつでも見られるようにしたいと考えていました。
しかし、自炊代行業者では書籍以外の日記やパンフレットなどのスキャンは受け付けておらず、頼むことができません(依頼できる以前の問題として、日記は絶対に見せたくない…)
自炊代行業者に依頼できない(したくない)ものがあり、自分で自炊をすることにしました。
3.今後も紙の本を購入する
現在は多くの本が電子書籍で販売されていますが、今でも紙の本でしか出されていない書籍や電子書籍化するまでに時間のかかる本が数多くあります。
また、中古として出回っているものの電子書籍として今後も出版されないであろう「古本」を買うのが好きなため、今後も紙の本を間違いなく購入することになります。
紙の本を買うたびに自炊代行業者へ依頼するのもいいですが、この後紹介する自炊にかかる費用との比較やいつでも自分の好きな時に本を自炊できるメリットを考え自分で本を自炊することにしました。
本の自炊概要(書籍数、期間、使用機材、費用)
3つの理由から自分で本を自炊することを決めましたが、私が実際に自炊した時の概要は次のようになります。
自炊した書籍:1,089冊
- 文庫本:296冊
- 単行本:512冊
- 雑誌:256冊
- その他(地図、図鑑等):25冊
自炊期間:約2ヶ月
主に平日の隙間時間や土日に集中して自炊作業を進めていきましたが、プリンターを2020年の2月15日に購入し全てのスキャンが完了したのが4月27日になります。
スキャナーや裁断機など使用する機材により作業時間も大きく変わりますが、自炊作業を進めるごとに慣れていき1冊にかかる作業時間も減っていきます。
後ほど詳しく紹介しますが、自炊作業にはスキャンだけでなく裁断後に出る紙屑の掃除などもあるため可能な限りまとめて作業することをおすすめします。
使用機材
スキャナー:scansnap ix1500
スキャナーはどれにするか本当に悩みましたが、本の自炊をしている人の間で評判の良かった「scansnap ix1500」を選びました。
値段が4万円以上(44,242円/税込み)したので最初は「スキャナーに4万円って、高すぎるでしょ…」と思いましたが、1,000冊以上の本を自炊して紙詰まりがほぼ無かったことや速いスキャンスピードなどを考えると、結果的にはscansnap ix1500を選んで良かったと思います。
サイズが小さく置き場所を選ばないことやスキャナー本体で操作が完結する簡単操作のタッチパネルも気に入っています。
もっと安いスキャナーもあり少ない冊数の本を自炊する人にはもったいないスキャナーかもしれませんが、今後も本の自炊や様々な書類をデジタル化する予定のある人は買って損のないスキャナーだと思います。
scansnap ix1500を買った当時は考えていませんでしたが、現在は写真のスキャンにもscansnap ix1500を利用しています。
複合機のスキャナーも使えましたが写真を1枚1枚取り換える必要から大量の写真をスキャンするには時間的に無理でしたが、scansnap ix1500は20枚ほどの写真を一気にスキャンできるのでネガのないフィルム写真をスキャンする時にはとても便利です。
当サイトのギャラリーで掲載している中国の写真は全てscansnap ix1500でスキャンしたものです。
10年以上前に工事現場用のフィルムで撮影した写真なので粗い写真になっていますが、ネガがなくアルバムに放置していましたがスキャナーでデジタル化したことでHPに掲載できるようになりました。
>中国ギャラリー
裁断機:コクヨ DN-21
裁断機は実家に元々あったコクヨのDN-21というものを利用しました。
今は新しいタイプの商品になり同じものは販売されていない型の古いタイプの裁断機ですが、業務用なのか切れ味はかなり良いです。
ただし、サイズがあまりにも大きいので使わない時の保管場所に困っています…
裁断機は全ての自炊が終わった後にコンパクトなものを購入しました。
1度に裁断できる枚数は減りますがコンパクトで収納場所を選ばないので気に入っています。
エアダスター:エレコム
これは必須ではありませんがスキャナーを掃除するためにエアダスターを購入しました。
本の自炊をすると分かりますが、本を裁断すると本の切れ端や裁断カスがたくさん出てきます。
この紙屑は本をスキャンするごとにスキャナーに溜まっていき、本を何冊もスキャンしていくと紙屑や汚れによってスキャナーにエラーが出ることもあります。
スキャナー内の紙屑を掃除すればエラーは解除されますが、最初のうちはカメラ用のブロワーで紙屑を飛ばしていましたが完全には掃除できないのか度々エラーが出るようになり途中からエアダスターで掃除するようにしました。
ひと吹きすればホコリや紙屑が簡単に掃除できる快感から最近では意味もなくエアダスターでスキャナーを掃除しています(笑)
自炊する本の数が少ない人は小さなブロワーで十分かもしれませんが、スキャンする本が多い人はエアダスターを用意しておくことをおすすめします。
余談ですが、このエアダスターはスキャナーの掃除以外にもパソコンのキーボードやデジカメの掃除にも使えるので便利です。3本セットで1,000円程なので、1つ持っていると何かと重宝します。
自炊費用
本の自炊にかかった実費は購入したスキャナーとエアダスターになります。
- スキャナー:44,242円
- エアダスター:1,022円
- 合計:45,264円
通常はこれに裁断機代が加わります。
スキャナーはもちろん、裁断機もピンからキリまであるので予算やサイズ(普段の置き場所)を考えながら自分に合ったものを選んで下さい。
私が本や雑誌1,089冊を自炊したやり方
私が自分で本を自炊することにした理由や自炊の概要について紹介しましたが、ここからは実際に自炊作業をした時のやり方について紹介します。
あくまでも私がやった自炊方法なので流れを確認した後は自分がやりやすいオリジナルの自炊方法を見つけて下さい。
私の本・雑誌の自炊方法
- カッターで切れ目を入れる
- パカリと分解。できない時は何度もカッターを入れる
- 分解完了
STEP1:本・雑誌の大きさ分類
最初に文庫本・単行本・雑誌など、本の大きさごとに分類します。
本をサイズごとに分類することで裁断する時に裁断位置を変えずにまとめて裁断できるので効率的です。
STEP2:本の分解
本のサイズを分類した後は本を分解していきますが、分解する前に必要なものと捨てるものを確認しておきます。
私は本の中身とカバーだけを残し、それ以外の表紙や背表紙・帯などは全て捨てました。
本のどの部分を残し捨てるかは人により分かれますが、私が本を自炊する最大の目的は「本をデジタルデータで読むこと」なので必要最低限のものを残しました。
必要なものを頭に入れつつ分解作業を進めていきますが、分解方法は単純に力任せに分解していきました。
小説などは簡単に分解できますがハードカバーの本は造りがしっかりしており、力任せにやっても分解できない事もあります。
その時はカッターなどで表紙と背表紙に切れ目を入れると簡単に分解することができます。
カッターで切れ目を入れる
パカリと分解。できない時は何度もカッターを入れる
分解完了!綺麗に分解できました
同じ要領で背表紙もやると分解完了。
本の自炊作業の中で、この分解作業が意外と手間になります。冊数をこなしていくと手も痛くなり次第にやる気もなくなるので要注意の作業です…
STEP3:本の裁断
本を分解した後は分解した本を裁断機で裁断していきます。
本は自分が利用する裁断機に合わせて裁断するページ分をバラしていきますが、先ほど表紙と背表紙を分解しているので紙を引っ張れば簡単にバラすことができます。
紙をバラす時に多少面倒に感じますが少ないページでバラすことをお勧めします。
欲張ってたくさんのページをバラすと裁断機でうまく切れなかったりスキャナーの紙詰まりの原因にもなります。
私はだいたい20ページくらいを目安にバラしていました。
全てのページをバラした後は裁断機を本のサイズに合わせて裁断していきます。
裁断方法はそれぞれの裁断機によって異なりますが、裁断する時は少し余計に紙を裁断するくらいの気持ちでやった方がうまくいきます。
最初の頃は何となくもったいない気がして余白ギリギリを裁断していましたが、余白ギリギリに裁断すると本がくっついていることがありスキャンする時の紙詰まりの原因にもなります。
本の裁断後はカバーの裁断もします。
カバーの裁断は折り目のところに合わせてカットすればうまく裁断できます。
カバーも表と裏だけを使い背表紙や折り返しの部分は全て捨てます。
STEP4:scansnap ix1500でスキャン
裁断後はスキャンしていきますが、スキャナーへ入れる前に裁断した本の背側をパラパラして裁断屑や本のくっつきを取り除きます。
裁断したカバーは本のサイズと微妙に違うので最初に中身をスキャンして最後に表紙をまとめてスキャンします。
scansnap ix1500は1度に50枚程スキャンできるので紙を整えてスキャンを開始(実際はもう少し多い枚数もスキャンできます)
ボタンを押すと後は自動でスキャンしてくれます。
スキャン後は実際のデータを確認しますが全てのページを1ページずつ確認すると時間がかかるので本の前半・中盤、最終の各ページをチェックするようにします。
scansnap ix1500で1,000冊以上の本・雑誌をスキャンしましたが、スキャンできなかった時はちゃんとエラーが出るのでスキャン漏れは1度もありませんでした。
STEP5:データの圧縮
スキャンしたままのデータでは容量が大きいのでサイズを小さくするためにデータを圧縮します。
圧縮ソフトは色々ありますが私はscansnap ix1500のドライバーをダウンロードした時に同時に(気づかないうちに)インストールされていた「ABBYY FineReader for ScanSnap」というソフトを利用しています。
今回スキャンした本のオリジナルデータは29.1MBですが圧縮したことで3.3MBまでデータを小さくすることができました。
また、私の設定が悪いのかscansnap ix1500でOCRを読み込んだ時は縦文字を横文字として認識してしまいます。
しかし、このABBYY FineReader for ScanSnapでデータを圧縮することでOCRも縦書きを認識するようになります。
データを圧縮して問題がなければ次の本をスキャンしていき後はひたすら1〜5の作業を繰り返していきます。
1冊ずつこの作業を繰り返すと効率が悪いので最初に自分が自炊できる本の数を取り出し、10冊なら10冊まとめて「分類」「分解」「裁断」「スキャン」と進めていくと掃除の手間も一度で済むため作業時間を短縮できます。
本・雑誌を自炊する時の注意点
1,000冊以上の本・雑誌を実際に自炊する中で次の点に注意しながら自炊したことで、よりスムーズに自炊作業を進めることができました。
- 完璧な自炊を目指さない
- 入浴前に本の自炊をやる
- ゴミ出しの日を意識して本の自炊をする
1.完璧な自炊を目指さない
本の自炊を始めた当初は家にある全ての本を完璧に自炊しようと考えていました。
しかし、様々な本に触れながら自炊を進める中で紙の匂いやページをめくる感覚など、電子書籍にはない紙の本の良さがある事を改めて感じました。
そのため、何となく後回しにしていた100回以上読んだお気に入りの本は自炊せず、紙の本として保管することにしました。
本の自炊を決めた後も完璧にこだわらず、臨機応変に自分に合ったやり方で自炊を進めていくのことで無理なく最後まで自炊作業を進めることができます。
2.入浴前に本の自炊をやる
本を自炊する時は本の分解や裁断する時など、たくさんの紙屑が飛び散ります。
一度、時間の関係から寝る前にパジャマ姿で本の自炊をしましたが、自炊作業やその後の掃除でパジャマにたくさんの紙屑が付き着替えたことがあります。
気にしない人はいいのですが、紙をずっと触り続けることで手の脂もなくなりカサカサになります(歳のせいもあります…)
ある程度汚れることを考え入浴前に本の自炊をすることをおすすめします。
3.ゴミ出しの日を意識して本の自炊をする
何度も紹介していますが本を自炊するとたくさんの切れ端や紙屑が発生します。
スキャン後の本は基本的にゴミとして出すことになります(最初はすごい罪悪感を感じました…)
ハードカバーの本を20冊も自炊すればゴミ箱も一杯になり、紙なのでかなりの重さになります。
いつでもゴミを出せるマンション住まいの方はいいですが、それ以外のゴミ出しの日(燃えるゴミの日)まで出せない人は裁断後の紙を一時保管しておくスペースも確保しておく必要があります。
「自炊後は大量の紙をゴミとして出す」ということを頭に入れながら、自炊作業をして下さい。
まとめ
私が自炊代行業者に頼まず自分で本を自炊することにした理由や本を1,000冊自炊した時の自炊方法について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
本を自炊することで家にあった全ての本がスマホやタブレットで場所を選ばず読めるようになり、本を置いていたスペースも有効活用することができます。
一方、本の自炊は本の分解や裁断など手間のかかる作業も多く、ある程度の作業時間を確保する必要があります。
本の自炊にかけられる予算や作業時間など、自分の状況に合った方法で本の自炊を進めてみて下さい。
この記事があなたが本の自炊をする時の少しでも参考になれば幸いです。